小児外科で診る病気には、包茎、鼠径ヘルニア、切れ痔、便秘、便の異常など、比較的多くのお子様に見られる症状が含まれます。これらの疾患が重症になりますと、 手術が必要になることもありますが、手術を必要としない軽症ですむ場合も多く見られます。
ここでは比較的頻度の高い疾患で、大きな病院を受診すべきかどうか、ご両親が迷われるかもしれないものについてまとめました。
診察の結果、手術が必要と判断された場合には、その疾患を得意とする医療機関へご紹介させていただくと共に、術後の変化を綿密に診させていただきます。また、小手術や小児外科特有の処置を院内で行うことが可能です。参考にして頂ければ幸いです 。

鼠径ヘルニア

小児外科で最も頻度の高い疾患です。鼠径部とは太ももの付け根の上あたりのことを指します。腹腔内の臓器(腸や卵巣など)が出てきて鼠径部がふくらむことで気づかれます。乳児ではもともと鼠径部がふくらんだように見えるものですが、左右非対称であれば疑いが高くなります。痛みを伴うことは稀です。
新生児では自然軽快することもありますが、1歳以上ではこれは期待できず、全身麻酔下の手術(20-30分)が必要になります。最近一部の施設で腹腔鏡手術が行われるようになっていますが、まだ歴史が浅いので、きちんと説明を受けて理解した上で受けるようにしたいものです。

臍ヘルニア

いわゆる「でべそ」のことです。おへその中に腸や脂肪が出てきていることもあれば、臍の皮膚がたるんでいるだけのこともあります。新生児期の臍ヘルニアは自然治癒することが多いのですが、1歳を過ぎても残る場合には、手術することが一般的です。年長児では局所麻酔も可能です。
綿球による圧迫固定で自然治癒を促進させることができるのですが、これは新生児や乳児期の場合で、年長児では効果は期待できません。また、テープによるかぶれがひどい場合には断念せざるを得ないこともあります。

裂肛(切れ痔)

いわゆる切れ痔で、排便後の出血で気づかれます。幼児期には便の太さに対して肛門が狭いために起こります。かなり多くのお子様が切れ痔の症状を持っています。便の表面に血が付いていることで発見されることもあります。12時方向に皮膚の隆起を伴うことが多く、肛門周囲の腫瘍に見える場合もあります。軟膏や坐薬は効果がなく、緩下剤で便を軟らかくしてやることが重要です

便秘

便秘の定義は難しいのですが、2-3日に1回出ているようであれば心配いりません。浣腸や坐薬、緩下薬など、本人にあった薬を探り出し、根気よく治療していきます。慢性便秘に対しては、指で肛門付近の硬い便を取り除く処置(摘便)が必要になることもあります。
しつこい便秘が見られるときに、一番重要なことはヒルシュスプルング病という、手術が必要な疾患を否定することです。典型的なヒルシュスプルング病では新生児期から便秘になるので退院前に見つかるのですが、軽度のヒルシュスプルング病では乳児期以降に頑固な便秘で診断されることもあるのです。判断に迷う場合には注腸造影検査、肛門内圧検査、直腸粘膜生検などの検査をする方が安心です。

皮膚・皮下腫瘤

こどもに多いのは粉瘤、石灰化上皮腫、リンパ管腫、脂肪腫、正中頚嚢胞などの良性腫瘤です。摘出術が必要です。局所麻酔を受けられるお子様には、当院で日帰り手術(通常約30分)を受けていただくことが可能です。また、嚢胞状のリンパ管腫には薬剤の注入療法が有効です。

停留精巣

精巣が陰嚢内にないことです。精巣が陰嚢内にあることには温度を低く保つという生理的な意味があります。停留精巣では精巣の温度が高くなり、造精能に障害が出ること、発がん率が高くなることが知られています。臍ヘルニア同様に乳児期早期には自然軽快が期待できるので、1歳を過ぎても位置が異常な場合に手術で陰嚢内におろします。ただ、停留精巣では単なる精巣の位置異常だけでなく、精巣そのものに先天的に異常があることも多く、手術で発がんや萎縮を100%防げるわけではありません。術後も定期的に経過を見ていく必要があります。

包茎

乳幼児では仮性包茎が普通であり、亀頭が全部露出されていることはありません。亀頭と包皮の不完全な癒着で恥垢が腫瘍と間違われることもあります。仮性包茎は小児期に手術する必要がありませんが、真性包茎(外尿道口が見えない)では小学校入学頃までに手術することが一般的です。

便色の異常

便の色に異常がある場合、胆道閉鎖症や胆道拡張症などの重大な病気が隠れていることがあるので注意が必要です。新生児から乳幼児の便色は黄色、緑色、褐色です。クリーム色や灰白色の場合にはすぐにご相談ください。

腫瘍の早期発見

いくつかの病気(片側肥大、無虹彩症、BWS症候群、結節性硬化症など)では腹部に腫瘍が出る頻度が高く、定期的に超音波検査を行うことが推奨されています。当院では土曜日も検査を受けることが可能です。すでにそのような診断を受けられている場合、担当医からの簡単な紹介状をお持ち願います。その都度結果を担当医に報告して連携を図っていきます。

最新超音波装置で、心配な症状を診断します

超音波診断装置は体表や腹部の腫瘤、腹痛、嘔吐、血便、血尿などの症状があったときに最初に行う検査です。肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、虫垂、腸管、子宮、膀胱、卵巣、精巣などが観察できます。
小児の腹痛の中には、入院や手術が必要になる病気があります。手遅れになると命にも関わることがあるので早期診断が重要です。手術が必要になる病気としては、急性虫垂炎、腸重積、腸回転異常、メッケル憩室、イレウス(腸閉塞)、急性膵炎、胆道拡張症、鼠径ヘルニア嵌頓、横隔膜ヘルニア、内ヘルニアなどがあります。そのほか、川崎病やアレルギー性血管炎(ヘノッホシェーンラインその他)など、内科的な治療が必要な病気が腹痛で発症することもあります。
これらの病気を診断するために、医師は病歴を詳しく聞き、身体所見をとります。さらに必要に応じて血液検査、超音波検査、腹部単純撮影や造影CT検査などの放射線診断を行いますが、それでも診断がつかない場合には入院して経過を見る必要があります。
当院では超音波検査が可能となりましたので、お子さんに腹痛、腹部膨満、嘔吐、血便、血尿がみられた場合にはお気軽にご相談ください。もちろん、近隣の病院とも連携していますので、必要と判断したらすぐにご紹介いたします。